歴女、進撃。

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 ニークトーリを奪還して一ヶ月も経とうかとしているある日の事だった。  その日リサは何時もの様に執務室で自分のデスクに座り、一人地図を眺めていた。 (聞いた話じゃアントリオン、ヨーロッパ、レッドフォード……この三国を併せた大きさがアントリオンの本来の大きさ。まあ、それは今はいいとしてこれで地盤は固まった……。ここからが天下統一へ向けての本当の戦い……いよいよこっちから仕掛ける時が来たか――)  と、意気込みを見せるリサであったが、これはのっけから大きく覆される事となる。それどころか――リサがこの世界に来て、リサがアントリオンに来てから最大の危機がアントリオンに迫っていた。  その危機とは――。 『お館様。宜しいでしょうか?』  不意に扉の向こうから掛けられた声にリサが反応し地図から視線を外す。 (この声。キリスト?) 「いいわよ。入んなさい」 『失礼します』  返事とほぼ同時に扉が開けば、そこには予想通りのキリスト。しかし何時もならばニコニコポーカーフェースのこの少年が――この時は笑っていなかった。そしてそれを見逃すリサではない。  リサは必要ないと感じたのだろう。地図をたたみ始めると。 「城に行ったハズのあんたがスグに帰って来るって事は城への呼び出し。ジュリアスがあたしに直接相談したい事があるって事よね? んで、大抵が芳しくない話……」 「お察しの通りです」  キリストは返事をするとリサの前へと赴く。それを見て取ったリサが。 「それで? 今度は一体何よ?」  と問えば、キリストは珍しく沈痛な面持ちで…… 「それが――。ミッカ帝国が攻めてきました」 「――!」  ……。  ……。  …………。 「嘘でしょっ!」  脳内での情報処理が遅れたか、時間差で返事をし立ち上がるリサだが―― 「ええ、嘘です」  この少年は即答だった。そしてこれによりリサは額を思いっきりデスクへと打ち付けた。 「あ、あんたねぇ……」  何とか顔を起こし恨めしそうにキリストを睨むリサだが、キリストの方はここでようやく何時もの笑顔に戻ると右手の人差し指を突き立て。 「まあ、嘘とは言いましたがそれに近い状況である事にかわりはありません。ミッカ帝国がこちらに向かっているのは事実ですから」 「……? どういう事なの?」
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