歴女、進撃。

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 ここでキリストはリサに背を向けると肩越しに振り返り。 「兎に角一度城へと向かいましょう。事情は途中で説明しますので」 「わかったわ」  既に扉へと向かい始めるキリストに――リサは一度頷くと素早くデスクを回り込むのであった。  足早に屋敷を後にし、城へと向かうリサとキリスト。 「それで? 一体どういう状況なのよ?」  リサが進行方向を見据えたまま口を開けば、キリストもやはりリサへと視線を送らず。 「情報によりますとミッカ帝国の使者がこの国に向かっているとの事です。内容は――この間奪還したニークトーリの地をそのまま無条件で明け渡せ……という事らしいです」 「いやいやいやいや、無理矢理過ぎでしょ色々と……外交のがの字もないっつーの!」  頻りに首を左右に振るリサだが、ここでようやくキリストへと視線を送り。 「大体さぁウチとミッカ帝国の間にいくつ国があると思ってんの? いくら平和的な使者だとしてもここまで来れるワケないじゃん!」 「そうですかね? 僕は来れると思いますよ?」 「なんでよ?」  キリストの返答が気に入らなかったか、鋭くキリストを睨みつけるリサ。そしてこれに反応したのかキリストもリサへと顔を向けると。 「簡単な理由です。相手が平和的な使者ではないという事。何せ使者は5万の私兵を引き連れてこちらに向かっていますからね」 「ごまんっ!」  目を丸くして驚くリサだが、キリスト少年の目は相変わらず弧を描き。 「ええ。そして相手は天下のミッカ帝国……どの国も逆らおうとはせず、既に使者はいくつもの国を素通りしてきているという話です。まあ、どの国も目的がアントリオンならウチは素通りさせれば安全だ……と打算しているのでしょう」 「んで、その使者が行く先々で目的はアントリオンだから通させろって言ってるうちに――情報だけが先行してあたし達のところにも来たってワケね……」 「ご名答」  キリストの言葉に、リサは苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべると地面を蹴り。 「チッ! 知ってた事だけど何処もロクな外交官が居ないわね? あたしだったら絶対に素通りなんかさせないで一泡吹かせてやるのに……」  これを聞いたキリストは「ははは」と微かに笑い。 「お館様らしいお言葉です。ま、今回ばかりは本当に一泡吹かせてやらないとアントリオンはそのままミッカ帝国の属国になっちゃうでしょうからね……。出来ますか? お館様?」
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