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朝がやって来た。
リビングに向かうと、丁度親父は朝食を食べ終えたところだった。
「コーヒー飲むか」
親父はキッチンから自分のと僕の、両方のマグカップを持ってきた。淹れたてのコーヒーの良い香りが湯気を通して僕の鼻孔をくすぐる。
「父さん今日は会社の人と食事とかで1日いないから。夕食の用意はしなくていいぞ」
「ああわかった」
親父が自室のある二階に上がった所で、食パンを2枚取りだし、焼いて食べた。
そうこうしてるうちに、親父がいつものグレーのスーツに着替えて、降りてきた。
「じゃ、いってくる」
扉が閉まる音がしたので僕は急いで親父の後を追いかけた。
もし本当に女と付き合っているのなら、デートでもするに違いない。僕にはその確信があった。
最近商店街の中に巨大なショッピングモールが出来たという噂だ。そして親父はここ数日の間でそのことについて僕に何度か質問してきており、その周辺の美味しい店なども情報を仕入れていたようだ。親父が風呂に入っている間、こっそり親父愛用のラップトップコンピ
ューターの履歴を検索した結果、それらしき店の公式ホームページを調べた形跡があった。
いくら父にも恋愛する権利があるとはいえ、いきなり見ず知らずの女を新しい母親として迎え入れるわけにはいかない。
商店街に入る。
親父が突然周りを疑り始めた。
そして、狭い路地裏へと曲がっていった。
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