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扉がギギギと嫌な音をたてた。
「マスター。コーヒーを2つ」
青年がカウンターにいる中年の髭を立派に生やしたオーナーらしき人物に注文した。
マスターはコクリとうなずくと、コーヒー豆を挽き始めた。
僕たちはそのままカウンター席に腰を下ろした。「あんた、親父なんだろ?」単刀直入にそう言った。
「僕は君と初対面のはずだが」
「そのジーンズ」
僕ははっきりと青年が履いているジーンズを指差しながら言った。
「それは間違いなく先日親父が購入したジーンズだ。銘柄もちゃんとoyajeansと書いてある」
「すまないが、君の親父さんと同じメーカーのジーンズを履いていたからといって、僕が君の親父さんだという判断材料としては些か不十分だ」
「まだある。僕は朝から親父を尾行していた。親父は誰もいないはずの廃工場に入っていったが、そこから出てきたのは親父ではなく、親父が持っているものと同じジーンズを履いたあんただった」
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