小さな奇跡

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翌朝、月曜日。 部長がアイロンの掛ったシャツを着て、ネクタイを締める姿をちら見する。 …かっこいい…。 …あ、今日は私が選んだ黒猫のネクタイだ。 さらに心の中が緩くなる。 と思ったら 「ゆい。何をニヤケてるんだ?」 …顔まで緩んでいたみたい。 「…何でも…ないです。」 「ゆいの格好も秋らしくなったな。…色っぽくなり過ぎないか?」 部長はスーツの上着を着ながら言った。 上着を羽織る姿も…かっこいい。 そんなことを思いながら部長に答える。 「…そんなこと…ないですよ。」 私は秋になって、今までのような淡いパステルカラーに代わって、前に着たようなグレーや黒、バーガンディー、ベージュやブラウンの色味も着るようになっていた。 確かにパステルカラーよりはきりっと見えるとは思うんだけど、…色っぽくはないはず。 私の答えに部長は明るく言う。 「…まあ、色っぽくてもいいか。もう、社内でゆいに手を出す奴はいないだろう。…いたら俺に殺されるんだから。」 爽やかな朝に 爽やかな笑顔で。 これこそ鬼ではないのかと、頭をかすめたことはもちろん口には出来ない。 いつも通りに別々に出社して、 私たちの新しい一週間が始まった。
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