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社員旅行が終わったことで、部長の仕事も少し落ち着き、経理室にはいつも通りの時間が流れていた。
11月になり、日没がだいぶ早まったことで、残業時間に入るとすぐに窓の外は暗くなってしまうけれど、当然、私たちの残業が減ることはなかった。
忙しくてもそれをいかにこなすかが楽しく、やりがいでもあった。
毎日お昼休みに夕飯のメニューを決めて、仕事を終えて帰る支度をしながら、その段取りを考えるのが日課になっていた。
一週間があっという間に過ぎ、土曜日。
この日、部長は社長とお客さんとの会食だったので、前もって美咲と夕飯を食べようと計画していた。
部長のマンションに美咲を呼ぼうかと思ったけれど、美月さんに会いたくなって、美月に行くことにした。
暖簾の向こうにはいつも通りの美月さんの笑顔。
…と思ったら、
私は森田部長とのことを知っているからなのか…いつにもまして眩しい笑顔に見えてしまった。
でも、それを証明するかのように美咲が私より先に言う。
「あっれーー!?美月さん、なんか美人オーラがさらにスゴクなってるような!?」
「いらっしゃい。…美咲ちゃん、声が大きいわよ。さ、座って。」
美月さんは自分の正面のカウンターに私たちを促した。
「…だって…ホントにキレイなんだもん!!…もしかして…恋!?」
…美咲…。
この感の鋭さはホントにビックリしちゃう。
美咲の言葉に一瞬目を見開いた美月さんは、次には美咲に自分の顔を近づけて
「…ねえ。そういう美咲ちゃんも…なんか変わったんじゃない?」
「え。」
美咲の顔が赤く染まる。
そして、三人で顔を見合わせた。
「恋する乙女ね。」
美月さんがそう言って微笑んだ。
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