5人が本棚に入れています
本棚に追加
「一志」
「ん?」
「お年玉くれ」
手を出せば、一志は呆れたように息をつく。
「欲しいものでも?」
「いや、特には。ただちょっと言ってみたかっただけ」
よいしょ、とソファーにもたれている一志の足のうえに跨がった。
「オレ、正月とか祝ったことねえもん」
「そうか」
「ん。誰かと過ごすのも初めて」
言いながら体を寄せれば、抱きしめられた。
温もりに包まれ、安堵する。
「あ」
「どうした?」
「欲しいもの出来た」
「何?」
体を少し離し、微笑んでみせた。
「幻?」
「一志が欲しい」
「今?」
「今!」
仕方ないな、と言いながら、嬉しそうな顔をして優しく頭を撫でて来る。
唇を重ねて、その場所で押し倒された。
来年も再来年も、その次の年も、ずっとずっと、一志と居られたらいいな。
そう思いながら、与えられる温もりを全身で受け止めた。
終る
最初のコメントを投稿しよう!