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かつて、ロンディア王国には七人のガーディアンと呼ばれる異能の者たちが居た。
ガーディアン達はそれぞれ、赤、白、黄、緑、紫、黒、そして青――七色の薔薇の加護を受けていたという。
一色につき、一人のガーディアン。
それは、豊かな森と豊穣な大地、伝統と格式のある人々の歴史や文化を敵国から守るために、ロンディア王国が持つ外交国への抑止力でもあり、人々の前に姿を現さないガーディアン達は、幻影のようなものでもあった。
いつしかガーディアン達はおとぎ話の中の存在となり、その姿を見た者は一生幸せに暮らせるという噂まで、まことしやかに囁かれた。
* * *
大きな門を通り抜けると、その先の広場で、白亜の噴水が太陽に反射してキラキラ光る水の束を空へ押し上げる。
アーチを描くように作られた柵には真っ赤な蔓薔薇がつたい、薔薇のアーチをくぐり抜けた先にあるのは、白磁のテーブルと、二脚のイスだ。
緻密な細工が施されたガーデンテーブルは、一目で上等なものだとわかる。そのテーブルを囲うようにして植えられた色とりどりの薔薇が、ロンディア王国 伯爵――セプタード伯爵息女であるアイルの、一番のお気に入りの場所だった。
今日もお気に入りのガーデンチェアに腰かけ、メイドが淹れてくれた紅茶を飲む。
ロンディア王国に今も伝わる、伝説の七人のガーディアンの、七色の薔薇の花。
人工的には作れないと言われている青い薔薇を除いた全ての色が植えられているセプタード伯爵家の薔薇園は、色の洪水というに相応しいほど、様々な色の薔薇の花が大輪を綻ばせていた。
「お母様も、ご一緒出来たら良かったのに……」
ここ最近、アイルの母であるレディ・ランベリンは、「とても大切な用事があるのよ。ごめんなさいね、アイル」そのような謝り文句を口にしては、頻繁に外出していた。
それがアイルには、退屈で仕方ない。
広いお屋敷。綺麗な薔薇園。沢山の使用人に囲まれていても、大好きな母が近くに居てくれなくては意味がないのだ。
ぷくりと、まるでリスが頬袋を膨らませるかのように可愛らしく頬を膨らませたアイルは、まだ幼さの残るふっくらした足を、ドレスの下でばたつかせた。
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