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にへ、とあたしは笑った。本当にあの二人は優しかった。葉風と、沙良と、あたしと。
置いてきぼりはあたしだった。
「葉風と沙良と。お幸せになりなんし。よかじゃろ別に。それにあたし恋愛絡み嫌いだし。ふっふっふー、玖音さんとしては二人と一緒にいたら幸せオーラに攻撃されるのさ」
「……玖音」
「なに泣きそうになってんだよ、沙良。一緒に登下校しないだけであたし達って仲悪くなるような関係だっけ?」
「違う、けど」
じゃあいいでしょ、と言ったあたしの声はカサカサに乾いていた。丁度鳴ったチャイムを切りに、二人は席に戻った。大きく息を吐いた。読み終わる予定だった本は、読めなかった。
*
―――ざぷ、
と水音が耳に弾けた。浮遊感、身体を前に前に進めた。手で水を掴んで、付け根から足を動かしてキック。
―――陸より水中の方が自由だ。
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