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「いいねえ。お馬さんが駆けている姿っていうのは」
レクサの持つ水晶玉に浮かぶ山本牧場の様子を見ながら、海風の姿の神こと光風(みつかぜ)は呟く。
「馬駆ける、当たり前、おまえ、騒ぎすぎ」
レクサは冷たく言いはなつが、その割りには一緒に仲良く水晶玉を見ている。
あの騒ぎの後、光風は土地神の居住区たる空間に居着いていた。
この知床の地にしばらく滞在しないかと土地神の方から誘ったのだ。
普段なら余所者を自らの居住区に誘ったりしない土地神がわざわざそのようなことをしたのは、いまだ光風から感じる「客」の気配が気になったのだ。
「仮にも神格を持つ者が、何が悲しくてこのような地に惹かれておる」
土地神は傍目には明るく陽気に見える光風の姿を見ながら胸の内でこっそり問いかける。
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