愉悦の風

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 降り積もる。  錆び付いた自動車が、土地神と海風の姿の神の間に降り積もる。  これはどういう意味かと土地神がいぶかしむと、空から声が聞こえてきた。 「おじちゃん、闘いやめる」  その声を聞くと土地神は脱力しながら声の主を見上げる。  そこには赤い派手な蝦夷錦の上に土地神とお揃いの深い青のロングコートを着込んだ十歳くらいの美少女ーーレクサがいた。 「レクサ……、そなた」  闘いを邪魔され少し不機嫌な様子の土地神にレクサと呼ばれた少女は淡々と告げる。 「おじちゃん、知床岬、無い」 「はっ?」  唐突に告げられた言葉を聞き思わず土地神は思わずおかしな声をあげた。 「それはどういう……」  土地神はレクサに問いかける途中で何気なく辺りを見回し絶句した。
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