第1話

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ある休日 インターホンが鳴る 朝だ 昼近くではあるが 決まってこの時間は宅配便 田舎で暮らす年老いた親からの 煮物だの 靴下だの 少しの手紙にいつも肩身の狭さを感じつつも ありがたさも正直感じる 今日もやはり宅配便だった 印鑑は玄関の靴箱の上 ルーチンにも近い作業で 印を押す いつもの宅配便 ただいつもと違ったのは その送り主が 田舎の親ではなかったことだ 全くその瞬間では思い当たる人物 ゼロ だった 送り先は自分 合っている もう一度確かめる 送り主を確かめる 頭がぐるぐるする 変な緊張だ 何かここ最近を振り返っても見た やはり思い当たらない 誰だ? 卒業アルバムも 少しの名簿も田舎だ 確かめようもない 東京都調布市… そこまでは実在している そこから先の住所は分からない いや 知らないだけかもしれない 検索してみるか? いや その前に誰だ? 中身を見れば分かるかもしれない なにせ 自分宛なのだから 必ずヒントがある ずしりと重い が そんなに大きくはない段ボール どこかで買ったのか? いつもの田舎からの宅配便のような どこかのスーパーでもらったような絵柄や文字がない 無機質な段ボール 大きさは… 何となく本なのかもしれないと感じる そうあって欲しいからかもしれないが 何かのハードカバーの新刊本かもしれない 開けてみる 割に几帳面な自分が 動揺しているのが分かるほど ぐしゃりとあけた 悲しくも 中身への期待 ヒントの存在 本 もろもろの想定はくずれた 時間をとめた いや 思考をとめた
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