第1話

10/10
前へ
/1138ページ
次へ
「────はッ!」  すぐに我に返った柚月が気付くも、後の祭りだった。  側にいる男たちも、腰をぬかし、がくがくと震える。彼らは化け物を見るような目で柚月を見つめていた。その表情以上に、彼女の顔からは血の気が引いていく。 「しまった……」 「どうせ、こうなるんだ。必要ないでしょ」  何もかもを見透かしたように、ぼやく青年の声。  文句を言うために柚月は振り返るが、すぐ側にいたはずの彼はいなかった。いつの間にか、少し離れた木陰の下で袴についた土埃を払い落としている。ちゃっかり自分だけ避難していたらしい。  やっぱり、ムカつくな!  この野郎!
/1138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

176人が本棚に入れています
本棚に追加