第1話

4/10
前へ
/1138ページ
次へ
「なんですって? よく聞こえなかったわ」 「君みたいな狂犬に刃物なんか……」 「同じこと二度、言わんでいい!」  先に耐えきれなくなったのは柚月の方だった。怒鳴りながら青年の胸ぐらを掴む。 「あんたねぇ、こうして何かっちゃ呼び出すけど、私にも生活があるの! その前に、女子高生なの! 未成年なの! バイト禁止の学校に通ってるの! 勉学に勤しむ現代日本の高校生をノーギャラで呼び出して悪人退治させるなんて……労働基準法どころか、人権無視よ! あんた、何様!?」  一気にまくし立てた柚月に距離を詰められても、青年は眠たげな表情のままだ。 「初めて会った時、僕の名前は東雲(しののめ)(れん)って教えたはずだけど」 「いつ、あんたの名前を訊き直したよッ!?」  犬歯を見せて突っ込む柚月。  さらなる迎撃体勢を強化したため、背後から近づく気配に気付かなかった。  のび放題の葦を踏み、柚月たちに声をかける。
/1138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

176人が本棚に入れています
本棚に追加