第1話

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『謎の破片、京都で見つかる』 今朝の新聞の見出し。 “破片”が日本で見つかったのは初めて。 アメリカや中国、オランダやイギリスでは 同じような“破片”が前にも確認されていた。 朝のニュース番組もその話題で持ちきり。 偉い人たちがそれぞれの分析を展開している。 「年代が特定できないほど古い破片である」 「宇宙船の一部ではないだろうか」 「なぜ今このようなものが続々と。不思議だ」 焦げたトーストを齧りながら私は そんな話を聞くともなしに聞いていた。 「こら! 遅れるわよ!」 お母さんの怒鳴り声に飛び上がる。 私は慌てて家を出た。 そういえば、今日は一限から日本史。 あの先生の話、眠いんだよね。 まぁ、どの先生も眠いけど。 「えー、こうして日本は開戦を、余儀なくされたのであります」 眠気を紛らわせるにはおしゃべりに限るよね。 隣の席のマイに話しかけてみる。 「ねぇマイ、昨日さ……」 気が付くと、マイはブラジル人になっていた。   !? 驚いて後ろを向くと 学級委員のあの子は、今やポルトガル人である。 クラスのみんながいつの間にか色んな国の人たちに変化している。 フランス、イタリア、……あれってバチカン? そして、みんながみんな 例の“破片”を手に持っていた。   「さぁ、始めよう」 誰かの合図で、みんながその“破片”をひとつの席に持ち寄る。 それはジグソーパズルのように巧く組み立てられて、ある形を作っていく。 立体パズルみたい。 やがて、どこかで見たような、細長い球体が出来上がろうとしていた。 最後に誰かが私の名前を呼ぶ。 いつの間にか、私もこの手に“破片”を持っていて どうやら私がハメ込むと、完成するらしかった。 言われるがまま、私は最後のピースをハメる。 机の上に、ひとつのミサイルが完成した。 教壇の上にいるのは、どこの国の人だろう。 彼はどこかから赤いスイッチを取り出して、そのボタンを押した。 ──全てが、あっという間に吹き飛んだ。 ひとり残らず。跡形もなく。 でも実際に吹き飛んだのは私だけだったようで クラスのみんながクスクスと笑いを堪えている。 「おいおい、もう少し静かに寝れんのか」 教師にしては注意の仕方が若干間違っているような気がするけど 寝てたのは私だ。何も言えない。 私は黙って倒れた椅子を元に戻した。 私はそれに座る。 まだ頭がぼんやりしている。  
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