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芦田君はあたしの反応を見て満足そうな顔をすると、自分のグループの元に帰って行った。
「もー、あんたらよそでいちゃついてよね」
熱くなった頬を両手で冷やしていると、背後から潜めた声が耳に届いた。
「いちゃついてなんか……!それよりあゆ、あんまりからかわないでよ」
「だって面白いんだもん」
「面白いって……」
小声であゆに反論していると、視界の隅に芦田君の後ろ姿と。
……あたしをジッと見ている小嶋さんが映った。
ーーー?
何だろう……
視線が合うとパッとすぐに外されてしまったけれど、なんだか胸がザワザワした。
だって小嶋さんの表情は無表情に近かったけれど、どこか冷たく感じたから。
「雪香、どした?」
あゆの言葉なハッとして、慌てて視線をあゆに移した。
「……なんでもないよ」
首を振りながら笑顔を作ったけれど、ぎこちなくなってしまったかもしれない。
「そう?土田達待ってるから行こか」
「うん」
小嶋さんは悪い人なんかじゃない。
前話したときに優しかったし、全然嫌な雰囲気なんて感じなかった。
今のはただの……
あたしの勘違いだよね。
そう自分に言い聞かせて、みんなの元に足を進めた。
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