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「雪香、あたしちょっと福に電話して来ていい?」
「うん、行ってらっしゃい」
「雪香も芦田の所、行くんでしょ?」
「……あ、うん」
「あんまり遅くならないようにね」
お風呂上がり、脱衣場。
濡れた髪から雫が垂れると同時に、額にもジンワリ汗が浮いた。
あゆが口元を上げ、あたしを下から覗くように見上げたから。
「遅くなんて、ならないよ」
「ならいいけど?まぁ、先生に見つからないようにね」
あゆは最後までニヤニヤ顔のまま、脱衣場から出て行った。
……もう、あゆったら。
なに考えてるんだろう。
ふぅと息をつきながらも頬には熱を感じ、大きな壁張りの鏡に自分の姿を映した。
う、紅くなってる。
見事に紅く染まっている顔を見て、更に紅くなる。
……変な事、なんて。
考えてないもん。
……ただ、芦田君と近付きたいだけ。
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