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「大っ……!」
俺がとっさに大島の名前を呼んだ時には、大島は背を向け走り出していて。
「待って!」
その時、大島を追おうとした俺の手を掴む小嶋さんに、全てを理解した。
ああ、そういうことだったのか。
目の前のこの人に、まんまと嵌められた訳だ。
俺は前に進める足を止め、顔だけ振り返り小嶋さんを見た。
「……あのさ」
大島を追いかけるのをやめた俺に何かを期待してるのか、小嶋さんは少し口元を上げている。
その表情、よく作れるな。
沸々と湧き上がる黒い感情を、顔に出さずにはいられない。
「計算高い人って嫌われるの、分からない?」
「……え?」
今度は体ごと振り返り、動揺を見せた小嶋さんを見下ろす。
「何されても俺は、大島しか好きにならない。
ーーーこれからも」
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