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「う、ううー……」
涙が溢れた。
さっきまでも沢山出たのに、限界を知らないあたしの涙腺はとめどなく水分を供給する。
「……そ、う思ってっ…たの
けど…っ怖くて……逃げてた……っ」
芦田君が浮気なんてしないって分かってた。
けど小嶋さんが魅力的過ぎて、自分に自信が無くなっちゃって……
自分ばっかり守るのに必死になって、芦田君の気持ちを後回しにしていた。
「2人はお似合いだから、大丈夫」
あたしの心の声を読み取ったのか、相川君は何故か可笑しそうにそう言った。
何回も軽く頷いて。
「……ありがとう」
泣いてる場合じゃない。
あたしが信じてあげなきゃ、芦田君が可哀想だ。
彼女なんだから。
ポケットからハンカチを出し、ゴシゴシと勢い良く涙を拭き取り立ち上がる。
「相川君、ありがとう。
あたし芦田君の所行ってくる」
「その必要はないんじゃない?」
「え?」
その言葉にキョトンとすると、相川君は優しく微笑んであたしの後ろを指差した。
ゆっくりと振り返り、その方向を見ると。
肩で息をする、芦田君が立っていた。
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