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「じゃ、俺部屋戻るから」
相川君はあたし達を見て、踵を返し背中を向けて行ってしまった。
「あーあ、……俺ってお人好し」
ありがとう、相川君。
心でそう呟きながら、隣を見上げた。
「芦田君、ごめんね。あたし……」
「待って」
口を開きかけたあたしの言葉を遮り、掴んだ腕にギュッと力を入れる芦田君。
「ごめん、大島
小嶋さんとは何でもない。
俺が好きなのは大島だけなんだ」
真っ直ぐなその言葉が、あたしの心に一瞬で染み渡った。
凍えるような冬から、ポカポカと暖かい春が訪れた感覚。
あの場から逃げ出したりしてごめん。
一瞬でも芦田君から目を逸らしちゃってごめん。
目の前には愛しい人。
愛しいからこそ、こうなってしまったんだよね。
だからあたしも、気持ち伝えなきゃ。
「……あたしも、芦田君が大好き」
口からそう出した瞬間、涙が込み上げた。
訳が分からないまま溢れて、溢れて止まらない。
目の前の芦田君の姿が、一瞬で歪んで見えなくなってしまうほど。
瞬間、フワッと包まれ、感じる温もり。
「ごめん……」
ギュッと力を入れられると、芦田君に抱きしめられてるんだと理解した。
久しぶりに感じる芦田君の体温に、あたしの鼓動は早くなる。
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