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どれくらい経ったか分からない。
けれどあたしには、一瞬にも、永遠の長さにも感じた。
ふと、唇が離れ、間近には芦田君の端正な顔。
呼吸が上手くできていなかったあたしは、空気を吸うことに専念してしまう。
……あたし、余韻も作れないなんて。
情けない自分に落ち込んでいると、芦田君にまた包み込まれた。
安心、するな。
勿論緊張もするけれど、それ以上にあたしを穏やかな気持ちにしてくれるの。
目を閉じて、今この瞬間の幸せを噛みしめていると、芦田君がポツリと呟いた。
「ごめん、止まらなかった」
申し訳なさそうに言う芦田君に、きゅうと胸が締め付けられる。
「あたしも……芦田君に触れたかったから」
顔を胸に埋めたままで、見えないから言えた一言。
だって今、ものすごい勢いで顔に熱を持ってる。
こんな顔見せられない……
「あー、大島のバカ」
「え?」
今バカ、って言われた?
……あたし何か芦田君の気に触ること言っちゃったのかな?
一気に不安な気持ちになり、ゆっくりと芦田君を見上げると。
何故かなんとも言えない、複雑な面持ちの芦田君と目が合った。
「せっかく我慢してるのに、追い討ちかけるのやめて……」
片手で顔を抑えながら、芦田君は目をぎゅっと瞑っていた。
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