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「寒いね」
「うん、寒いね」
芦田君に手を引かれ、駅に向かって歩き出す。
「俺ポケットにカイロ入れてんの」
「そうなんだ!暖かそうだね」
「使う?」
「えっ、ううん大丈夫だよ」
芦田君のカイを取るつもりじゃなかったあたしは、慌てて顔を横に振った。
そんなあたしの様子を見て、芦田君はフッと笑って。
そして繋いでいるあたしの手を、芦田君のポケットに一緒に入れた。
「誰が1人でって言ったの。一緒に使お」
「……うん」
芦田君のコートのポケットの中にあたしと芦田君の2人の手を入れると、狭いポケットの中で更に密着する。
カイロがポカポカ暖かくて。
でもそれ以上に芦田君の温もりが伝わって、あたしはコタツに入ったようなホワホワした、暖かい気持ちになった。
「大島水族館行った事、ある?」
あたしが緩む頬を必死で治そうとしていると、芦田君から質問が降ってきた。
「うん。でも小さいときしかなくて、全然覚えてないの。だから記憶があるのは、初めて」
「そっか。良かった」
どこに行きたい?と芦田君に言われて、悩んでいるあたしに水族館にする?と言ってくれたのは芦田君だから、きっと安心してくれたのかもしれない。
芦田君となら、どこへでも行きたくて。
でも芦田君となら、どこでも良くて。
芦田君と一緒にいれるだけで、嬉しいから。
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