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違和感。
激しい違和感が複数。
レオは今、ヒューガが登場時に乗っていたオデッセイを運転しており、前を走るムルシエラゴに追従している。
ムルシエラゴの運転席はヒューガの聖域のような気がしてならず、結局この日本車、ホンダ・オデッセイを選んだ。
右ハンドルに違和感。
対向車線が見えない。
このオデッセイとかいう車、思っていたよりもハンドルについて来る。
しかし右ハンドルの車を運転するのは生まれて初めてだ。
例えようのない違和感を背負っている。
前を走るムルシエラゴのテールランプは、悔しいが唯一の灯火だ。
ムルシエラゴは先程のレースとは別人が運転しているかのよう。
ドゥオーモを名残惜しげに通り過ぎた後、ミラノ特有のごちゃついた小道を通ってこのコルシカ通りに来た。
ヒューガの意外な一面はその小道で発揮。
法定速度は守るわ、黄色信号で停まるわ、歩行者に道を譲るわ。
逆に他の車に道を譲られた際にはサンキューハザードを焚く始末だ。
モラルの塊じゃないか。
周りに気を配れない女だと思っていたが、運転では違うらしい。
それがまた違和感。
そしてもう一つ違和感がある。
……道に覚えがありすぎる。
というか、今日のレースはこのルートを通ってアルコ・デッラ・パーチェ広場に向かった。
このままコルシカ通りを西に進み続けると、南北に貫く高速道路A51と交差する。
その少し手前。
一つ前の大きな交差点を右折してマルコ・プルト通りに入ったとすると、完全なるレオの帰宅コースとなる。
まあ、恐らくここは直進してさらに向こうへ行…右折しやがった。
まさかヒューガはレオの自宅を知っていて、何かしらの目的があって向かっているのか?
いや、困る。
困るし意味が分からない。
そして二台の車はやがて県営団地に入る。
この最深部のアパートの某部屋がジジ、そして某部屋がレオの自宅だ。
まさかの自宅だ。
嗚呼、ジジは帰宅していたらしい。
アパートの前には彼のワーゲンバスが停まっていた。
普段はその右隣にゾンダを置いている。
ヒューガには何かある。
俺の部屋に用があるに違いない。
目的が分からない!
ムルシエラゴがブレーキをかけた。
───二台が停車したのは、レオのアパートの隣の宅だった。
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