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こっ…ここがヤツの拠点なのか……?
近所すぎる。
というか隣だ。
県営住宅が並ぶこのエリアの隅には、マンションではない一軒家が二つだけ在していた。
うち一軒はマンションの大家の自宅であることは知っていたが。
もう一軒のほうは、住宅というよりも車庫。
一階は三台分の住居一体型ガレージになっており、側面に張り付いたコンクリ階段で二階の玄関に入れるといった具合。
その無骨なコンクリート製の外観と一階の立派なガレージは印象深く、帰宅して目にするたび「いつかこんな家を建てたい」とか考えていたさ。
それが、まさか。
この女の住居だと?
隣じゃないかマジで。
「あの……着きましたよ?」
レオは口をあんぐりと開けていたことにようやく気付く。
運転席の窓をコンコンと叩くヒューガには「あ、あぁ…」とだけ返し、オデッセイを降りる。
「ここがお前の家か?」
「はい。中古住宅として最近購入したばかりでしたが」
「あのさ、気づいて……ないよな?」
「あなたのお気持ちにですか?」
「じゃかしい!! 隣のマンションが俺ん家だってことをだよ!!」
「はい。……えっ、はい?」
「いや、だから、まさに隣のマンションが俺の自宅なんだよ。ほら、駐車場にジジのワーゲンバスがあるだろ?」
「あっ、本当ですね……」
「そこの右隣にお前がぶっちぎったゾンダを置いてんだ。住んでて気付かなかったのか?」
「もっ…申し訳ありません。全く存じ上げませんでした」
ヒューガの様子を見る限り、ヒューガの住居がレオとジジの住居のすぐ隣にあることを本当に知らなかったらしい。
起伏のない表情だが、多少の驚愕は感じられた。
「レオさん」
「なんだ?」
「私が隣人だと嫌なんですか?」
「まあな。今後お前と会うかは分からねぇが、この家を見るたびさっきのレースを思い出しちまう」
「つまり嫌なんですか?」
「嫌だ」
「そうですか。私は素敵な隣人ができて嬉しいですけどね」
……ああ、やめろ。
やめてくれ。
その挑戦的な目線をやめろ。
レオは目をそらした。
「ムルチェは真ん中のガレージに入れます。右側にオデッセイを入れて頂けますか?」
「断る。右ハンドルの車庫入れは慣れてない」
「ならいいです。オデッセイが廃車になるよりなら」
「うるせぇな! やってやるよ!」
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