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それもこの女の不愉快なジョークと解釈し、レオは勢い良く瓶を傾ける。
……うまい、うますぎる。
完璧なプロポーションを持つムルシエラゴと見た目だけの美女を肴に飲む冷えたコーラはこれ以上となくうまい。
だが、素直に「うまい」と言ってはまたこの女が図に乗る。
レオは「まあまあだな」と悪そびれるが、ヒューガはそれでも笑顔を作った。
「隣人だったことは意外でしたが、まあまあのコーラで良ければいつでもご馳走しますよ」
「いいや、余計なお世話だ。それより俺はこれからどうすりゃいいんだ? 『帰りはなんとかする』とは聞いちゃいるが」
「私がパーチェへお送りします。そこでゾンダを拾ってここに戻りましょう」
「チッ……めんどいがそれしかねぇよな。分かったよ。さっさと行こうぜ」
レオは残りのコーラを飲み干す。
空いた瓶はヒューガに奪い取られ、ヒューガは既に空き瓶が多数収納されている瓶ケースへと向かった。
「運転しますか?」
まばらな空き瓶をケースの奥詰めに整理しながら、ヒューガは呟くようにそう問いかける。
「はぁ? お前が運転すんじゃねぇのか?」
「ショッピングモールで女性に荷物を持たせる男性と同じですよ。女が運転する車の助手席に乗るのって惨めに思ってしまいませんか?」
「うっ…うるせぇな! お前がそう言わなけりゃどうも思わなかったわ!」
「それはつまり?」
「俺が運転する! ったく、余計な気遣いしやがってよぉ……」
レオのその言葉を聞くのと同時に、ヒューガは瓶の整理を終えてレオの瓶を追加した。
そして立ち上がりレオと対峙。
「オデッセイでいいですよね?」
「選ばせねぇのか?」
「えぇ。やっぱりレオさんに運転させたらムルチェがかわいそうです」
「そうかいそうかい!! 俺のほうこそまっぴらごめんだ」
ヒューガは楽しそうな表情で、レオは明らかに機嫌の悪い顔付きでオデッセイに乗り込む。
セルを回すと、さほどうるさくないエンジン音が広いガレージに響いた。
ヒューガがスマートフォンを操作すると自動でシャッターが開く。
右手でギアを入れようとすが、この車が右ハンドルであることを思い出す。
左手で慣れないギア操作を行うと、ヒューガはまた「ふふっ」と笑った。
レオがキッと睨みつけると、ヒューガはムカつく笑顔で「すみません」と口に出す。
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