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初めてのキスは
何の味もしなかった。
だけど
あたしとユウの唇がフィットすることがあるなんて想像の域を超えている。
鼓動が聴こえてる。
あたしの心臓の音だ。
初めて入った男の子の部屋は
なぜだかいい香りがした。
部屋に置いてある消臭力とか
わかんないけどそれの匂いかも知れない。
本当に部屋に消臭力が置いてあるのかどうかもわからないし
それを確かめる術も
あたしは持たない。
あたしはただただ
バカみたいに
ドキドキするだけだ。
ユウは2回目のキスで舌を入れた。
変な音がして
さらにドキドキが増した。
これから裸を見られるかも知れない恥ずかしさより
この心臓の音がユウに聞こえてるんじゃないかと
そっちのほうが恥ずかしかった。
あたしは
濡れてない。
ひとりでするときは
いつもすぐ濡れるのに
今日は何も濡れてない。
キスされたのに。
あたしは確実にこわがっている。
嬉しいのに
幸せなのに
どうしてこわいの?
ユウを受け入れるのが
こんなにこわいことなの?
「大丈夫だから」
あたしは覚悟を決めた。
嘘。
覚悟なんて決まらない。
ただただ
あたしは
好きな人に触れられることと
好きな人に全部を見られることと
好きな人に全部を捧げることの
幸せにずっと耐えていた。
不安に耐えていたわけじゃない。
幸せに
耐えていた。
だけど…
だけど…
このときに気付くわけないじゃない。
今だって
信じられるわけないのに。
だけど…。
だけど…。
このときあたしの全部を
観てたのは
ユウだけじゃなかった。
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