ー その瞳に映るもの ー

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 けれども。それは『お互い様』なのだ。山崎だって、宵のことは言えない。だって、『あの頃』の宵だって、そう思っていたのだから。  『何故、今更になって』、優しくするのか・愛しげに接吻するようになったのか、と………。  山崎の胸は、尚もきつく締め付けられる。今のままの宵でいてほしい。『元に戻ってほしくない』と、願ってしまったのだ。  宵は、恐らく山崎を『憎んでいる』だろうから。けれど、『鹿嶋 龍之進』である今は、『好意』さえ感じる。  ーだから。『今のまま』でいて欲しかったー  あまりにも、『身勝手』が過ぎるであろうに。それでも『ヒト』である限り、『願うこと』は、止められぬのだ。  『希(コイネガ)う』ことこそが、『ヒトである証し』でもあるのだから。『願うこと』を止めたら、無為に生きるだけになってしまう。 ーそれでは、『家畜』や『植物』と変わらないー  『家畜以下』の扱いを受けていた宵……………いや、『鹿嶋 龍之進』ならば、尚更だ。 山崎 「………『止める』んやったら、今もうちやで?ホンマに、ええんか?」  『この先』に進んでしまったら、もう途中では止められない。
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