遺留残像

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私たち二人の間には、共通の友人も居なければ、共通の趣味も無い。 それでもどうしてか、十年前に親同士が勝手に約束してからというものずっと、私たちはマンションのエントランスで待ち合わせて、一緒に通学する。 たぶん、どちらかが「やめよう」と言えば、それで終わるのだろう。 そのきっかけが無いだけ。 たまたま今まで無かっただけ。 そしてこの奇妙な縁が、今も細々と続いている。 体に染みこんでしまって、なんとなくやめられない習慣みたいに。 私と美弥をつなぐもの、それはそんな感じ。 美弥は、エレベーターホールから近づいてきた私を一瞥すると、何も言わず、さっさと歩き出す。 自動ドアが開き。道路へ出る。 強い日差しに、一瞬、目がくらむ。 先に美弥、二、三歩後ろに私。 特に話題も無いまま、駅までの道のりを歩く。 美弥のハーフみたいな色素の薄い髪が、濡れたように艶めいて揺れている。 美弥が中学受験をしないで私と同じ公立校に通うことになったと、母から聞いた時、正直驚いた。 そして、私よりずっと成績がよかったはずの美弥が、私と同じ私立の女子高校に決めたと聞いた時は、もっともっと驚いた。
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