遺留残像

4/34
64人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
美弥が何を考えているのかわからない。 私を召使いみたいに連れ歩きたいのかな?  あるいは引き立て役として? そんなふうに考えるのが精一杯だ。 もちろん、裕福に見えて、何か家庭の事情があるのかもしれないけれど。 私のほうは。 私は自分から「やめよう」と言うつもりはない。 私は、そこらの平凡な女の子たちと同じように、きらきらして、ふわふわして、そして傷つきやすい、痛みやすいものが好きだ。 スワロフスキーのガラスビーズや、遠くから見る街明かりみたいな―――きらきら。 小鳥の羽毛や、シャボン玉みたいな―――ふわふわ。 地面に散った花びらのような、熟れすぎた苺みたいな―――傷つきやすさ、痛みやすさ。 そういうものを見ると、理屈抜きで心が躍る。 だから、美弥を見るのが好きだ。 長い睫にとまる光の破片の、きらきら。 柔らかなロングヘアの裾の、ふわふわ。 そしてどこか、つかめない儚い存在感。 全てが完璧だから。 同じ女としての嫉妬なんか、もうとっくに忘れてしまったから。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!