お客さん②

126/171

6588人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
事務所前のエレベーターの前で、仕事へ行く私と、出勤して来た京子さんと偶然会った時に話しをして、請求書を京子さんへ渡しておいた。 「もっと上手くやんなよ。」 そう言って笑う私に「本当にごめんね〜!有り難う。」 と気まずそうな京子さん。 そりゃ気まずいだろう。 お客さんと付き合ってる事がお店にバレたら、クビになってしまうし、この件があってから、気まずいのか、京子さんは待機所に顔を出さなくなった。 「娘が倒れた。」 とか言う、解り易い嘘を付いて店外をする為にお店を早退したり、そんな嘘を付いて早退してるのに、ホテルの隣の駐車場に京子さんの車が止まってる物だから、私は思わず笑ってしまった。 そんなある日、初めて会ったお客さんが、「実は前回が風俗デビューで、京子さんと言う人と会ったんですけど、ホテル出て少ししてから、お金貰ってねーんだけど!」 と凄い怒り浸透な口調で言われたらしく、「最初に渡しましたよね。」 と、強く言ったら、すんなり引き下がったらしい要は2重取りしようとしたみたいだ、「そんな事があったのに、また良く来たね。」 「はい、でも今日いつみさんに会って、怖かった風俗のイメージが完全に変わりました。来て良かったです。」 その言葉を聞いて、心から安堵のため息を吐いた。 前から、虚言癖があったり、新興宗教じみた事をお客さんにしてるので、お店でも随分と問題児になっていた京子さんだけど、お客さんを減らす様な事は本当に止めて欲しい。 このお客さんも、下手すればお金を2重取りされていたかもしれないのだ、確かに収入は大事だけど、お客さんの気持ちはもっと大事だ。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6588人が本棚に入れています
本棚に追加