お客さん②

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命は助かったが、私の地獄はここから始まった。 右脳の脳梗塞の後遺症は左半身の麻痺で、普通に歩く事も出来ない。 中でも私を1番苦しめたのは、笑えなくなった事だ。 今までの私が、どんな辛い事でも苦しい事でも笑い飛ばしてしまえ、と言う性格だった為に、この後遺症は本当に私を苦しめた。 普通に笑う事は勿論、声を出して笑う事が出来ない。 生かされてる地獄だった。 こんなに苦しいなら、あのまま死んだ方が良かった、といつも思い、どうやったら人に迷惑を描けないて死ねるか、と考える毎日だ。 そんな私をサクちゃんとケイちゃんが、また声を出して笑えるまでに、導いて、支えてくれた。 いつも俯いて猫背になってる私の背中を押し、「前みたいにシャンとしろ!」 と言ってくれたり、前みたいに声を出して喋って、笑える様にしてくれた。 そんな中で自然と私とケイちゃんは付き合う事になり、いつも後ろ向きな私をケイちゃんは精神的に支えて、また楽しい日常を取り戻してくれたのだ。 出会ってから9年、ずっと私の事を好きだと言ってくれてたケイちゃんの手を、私はやっと受け入れたのだが、既に遅すぎた。付き合い初めて2か月が経とうとしてる時、呼び出されて、近くのお店で一緒にランチを食べているとケイちゃんの口から信じられない事が告げられた。 「余命半年。」 この年の11月1日が余命だ、と言うのだ 病名は肝硬変、お店をやってる仕事がら、お酒を飲む毎日の付けが一気にやって来たのだ。
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