お客さん②

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少し時間を巻き戻して、2019年の8月2日、私がお店をやる事を告げる事無く、ケイちゃんはこの世を去った。 その前から何度も入退院を繰り返していて、前日の8月1日にお見舞いに行って会ったのが最後になった。 「オレ達もう‥‥。」 これが最後の言葉になった、何もしてやれない自分と付き合っているより、別れて自由に、と言う最後のケイちゃんの優しさだ。 ケイちゃんのお母さんから永眠の知らせがラインで送られて来たのを見た時は、世界が崩れて、歩けなくなる所たった。 ケイちゃんの家に向かう最中も信じられなくて、信じたくなくて、しゃがみ込みそうになるのを堪えて歩いた。 牧野さん以来、初めて好きになれた人がケイちゃんとだった。 でも、まだ私は誰かを好きになれるんだ、と希望を与えて、ケイちゃんは居なくなった。 絶対に既読にならないラインに「寂しいよ、会いたい。」 とメッセージを送る。
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