お客さん②

158/171

6588人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
私が仕事へ復帰出来た事に、秋保ちゃんの存在が大きかった。 可愛かってくれてるママの所へ手伝いに行ったのが、私の仕事復帰第1日となったのだが、そこであるお客さんに「お客さんを楽しませるのが仕事でしょ?それが出来ないなら向いて無いんしゃない?辞めたら?」 とその通りの事を言われて、でも自分の考えや気持ちではどうにも成らなくて、申し訳無さと悔しさで、バックヤードで大泣きしてしまった私に秋保ちゃんが「これが切っ掛けで仕事行くのが怖くなったりしちゃ駄目だよ、大変なのはこれからなんだから、一緒に頑張ろう!」 と私の手を握って言ってくれて、この言葉にこの時の私はどれたけ支えられたか。 私が風俗で働いているなんて全然知らない秋保ちゃんのこの言葉と、ひーちゃんの「前の自分に戻るんじゃ無くて、前の自分を超えなきゃ駄目なんだよ。」 と、この言葉にもどれだけ支えられて、励まされて来たか。前の自分との近いにぶつかる度にこの2人の言葉を思い出して踏ん張って前を向いて歩いて来れた。 それでも、時として、得体の知れない大きな力で抑え付けられて、下を向いてしまう事もあったが、歯を、食いしばって前を向く努力をして、粉々に砕けた自信の欠片を少しずつまた集めて、今の私が居る。 前程てまは無いが、人並みに自信も取り戻して、なんとか今は頑張っているが、やっぱり人と違う所とか、惨めな気持ちになったり、と気持ちの上下は激しい。 前より口数も減り、人と距離を置く様になってしまった。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6588人が本棚に入れています
本棚に追加