~プロローグ~

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とにかく・・・そんな時のオレは、人生で一番早く走ってるんじゃないかってくらい足が勝手に動くんだ。 美女なら朝でも大歓迎のところだが、残念ながらオレを追っかけるのは生きてる人間じゃない。 老若男女を問わない多数の霊の方々なのであーる。 この峠のある小高い山は、山のほぼ全体が大きな霊園になっていて、そのせいか古い民家や廃墟が多い。 一家全員行方不明になったと言う家がそのまま残されていたりして、どうにも気味が悪い。 この禍々しい雰囲気に霊が寄せ集まるのだろうな。 頂上付近の左右の沿道を脇に入ると、小さなお寺や神社が数ヶ所あったりする。 たぶんこの辺りの檀家のお寺や氏神様(土地神)だろう。 神社に続く細く長い山道は、両側には木が生い茂り、まるでけもの道の様な石っころや木の根が剥き出しの湿った地面に雑草が生えている危なっかしい道だ。 沿道の入口にに小さな立札が立っていて 『皇水神社コチラ』と、矢印が書かれているから間違いなく神社はあるのだが・・・ 実に怪しい・・・!! 本当にこんな所に神社があるのか? そう思い始めた頃、ようやく鳥居と石段が見えてくるのだ。 勾配が急な石段で、頂上にある社は下からは見えない。 オレにとっては寺社や神社は憩いの場所だが、ここは日頃から人の気配が無いマイナーな場所だ。 誰にも会わないから、奴らから急遽逃げ込むのにも打って付けの場所ってわけ。 出来れば逃げ込みたくないんだが・・・そういう時もあるって事さ。 そして、くじけそうな自分の根性と戦いながら、オレは日々全速力で一人雄叫びをあげながら、魔の坂を上る。
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