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「トラーーー!!あんた数珠持った?」
「はいはい、持ったよ母さん。も・ち・ま・し・た~」
「今日もしっかり気を張って、気をつけなさいよ!」
「丸腰で外に出たらダメよ。」
母さんはちょっと心配性だ。
毎日出掛ける度に同じことを言う。
結構口うるさくてたまにウザイ。
護身用の数珠を忘れるわけないだろ?何度も言うなよな。
まったく、トラ、トラ、うるさいわ!
オレはこの名前があまり気に入ってないんだ。
オレの名前は『瀧沢虎太郎(たきざわこたろう)』
いまどき、〇〇太郎なんてナンセンスだろ?
1998年の寅年に生まれたから、虎太郎らしい。
安易に付けた父さんを恨むぜー。
自己紹介の度にクスクス笑われるから嫌になるよな。
5歳上の姉ちゃんは『亜莉栖(ありす)』
まあいまどきの名前だよな。
チビで童顔で天然ボケ、加えてツンデレの姉ちゃんには、なかなか似合ってる。
由来はわからないが、母さんが女の子には可愛い名前を付けたかったと言う理由らしい。
そのせいか、どこか不思議ちゃんで困る姉ちゃんだ。
なのに、なんでオレは虎太郎なんだ?
今風のカッコイイ名前にしてくれよ~
ほら、『響』とか『朔弥』とか女子に受けそうなのあるだろ?
父さんネーミングセンスまったく無いのなぁ。
悲しくなるぜ・・・
その父さんと母さんはオレが8歳の頃離婚した。
父さんの女好きが原因かと思っていたが、どうやら究極の原因はそうではないらしい。
お家騒動があったとか無いとか?真意はわからない。
離婚しても会って普通に友人同士の様に話をする両親を見ると、ますます不可解だ。
おかげでオレも姉ちゃんもいつでも父さんには会えるから、居なくて寂しいと思った事はない。
「生きてるんだからさ~あんた達が会いたい時にはいつでも会えばいいのよ。」
と、母さんは言う。
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