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どんよりとした空気。
『彼』がいなくなってから、この部屋に漂う空気は、これが当たり前になってしまっていた。
なんとなしに集まるのだが、特に誰も口を開かず、俯き気味に座り、寝そべり、時間が来れば帰る。
今でも『彼』が帰ってくるのではないかと期待して、時折扉の方を向くが、そんな気配は微塵もない。
ハァ……と溜め息を吐く度に、空気の重みが増す。
―――ガチャ……
「「「「!!!」」」」
バッ!と、一斉に扉へ視線が集まる。多大な期待を込めて。
が、
「ハァ…ハァ…」
いたのは、青みがかった銀髪の少女。彼ではない。
また溜め息を吐いて、無為に時を過ごそうとした時、少女の頬を涙が伝った。
「来ました…っ!!」
何がだろう?泣いている少女を心配する視線が、僅かに疑問の色を帯びる。
少女は、弾んだ息を整えぬまま、頬を紅潮させて、涙を流したまま叫んだ。
「『彼』から…手紙が…!!」
瞬間、どんよりとした空気は払拭された。
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