違う時を歩んで

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ただ何となく、桜色の髪を撫でる。 その場にストン、と腰を下ろし、正面に座らせると、桜色は胸にしがみついてきた。 「……私は、ずっと覚えてたよ」 「…あぁ」 桜色は俯いていた。 その顔は、見えない。 「お兄ちゃんと会ったこと、お兄ちゃんと話したこと、お兄ちゃんに名前を貰ったこと、そして、6年前のあの日、どんな気持ちになったのかも、全部全部」 「…あぁ」 6年か……俺にとってはたった一週間でも、この子は6年の年月を歩んで、ここにいるんだ。 その間、何があったんだろう。 何をしたんだろう。 何を…言うべきだろう。 「お兄ちゃんは……っ!覚えてますか…っ!!」 「…久し振り。大きくなったな。…サクラ」 桜色……サクラが、顔を上げた。 あの小さかったサクラの面影をしっかり残しながら、すっかり大人になった少女がそこにいた。 感極まった、という風にサクラは涙を溢れさせ、強く抱き着いてきた。 「会いたかったよぅ…!」 いつの間にか、傍らに2匹の獣がいた。 2匹の獣は、微笑ましいとでも言うように尻尾をゆっくりと揺らす。 お疲れ、この子を守ってくれてありがとう。 俺は感謝を込めて2匹に微笑んだ。 「お兄ちゃん…っ!!」 俺は一週間。 サクラは6年。 違う時を歩んで来たが、確かに俺達はこうして再開した。 俺達の路は、再度交差した。
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