10224人が本棚に入れています
本棚に追加
/1148ページ
ただ何となく、桜色の髪を撫でる。
その場にストン、と腰を下ろし、正面に座らせると、桜色は胸にしがみついてきた。
「……私は、ずっと覚えてたよ」
「…あぁ」
桜色は俯いていた。
その顔は、見えない。
「お兄ちゃんと会ったこと、お兄ちゃんと話したこと、お兄ちゃんに名前を貰ったこと、そして、6年前のあの日、どんな気持ちになったのかも、全部全部」
「…あぁ」
6年か……俺にとってはたった一週間でも、この子は6年の年月を歩んで、ここにいるんだ。
その間、何があったんだろう。
何をしたんだろう。
何を…言うべきだろう。
「お兄ちゃんは……っ!覚えてますか…っ!!」
「…久し振り。大きくなったな。…サクラ」
桜色……サクラが、顔を上げた。
あの小さかったサクラの面影をしっかり残しながら、すっかり大人になった少女がそこにいた。
感極まった、という風にサクラは涙を溢れさせ、強く抱き着いてきた。
「会いたかったよぅ…!」
いつの間にか、傍らに2匹の獣がいた。
2匹の獣は、微笑ましいとでも言うように尻尾をゆっくりと揺らす。
お疲れ、この子を守ってくれてありがとう。
俺は感謝を込めて2匹に微笑んだ。
「お兄ちゃん…っ!!」
俺は一週間。
サクラは6年。
違う時を歩んで来たが、確かに俺達はこうして再開した。
俺達の路は、再度交差した。
最初のコメントを投稿しよう!