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「……キャァァァァァアアアアアアアアア!!?」
どんどん近付いてくる石畳。
これからの展開を想像して強く目を瞑る。
「お、ラッキー。目の前がギルドだなんてついてるな」
「痛いのはヤダ痛いのはヤダ痛いのはヤダ痛いのはヤダ痛いのは……あれ?」
痛いのどころか、死すら覚悟したのに、何も感じなかった。
………あれ?
「お兄ちゃん…何したの?」
「膝を使って衝撃を和らげただけだ。少し強い奴なら誰でも出来る」
あんなに高いところから、全く何も感じさせないのは無理だと思うけど。
呆然とする私を尻目に、お兄ちゃんは少し古ぼけた建物に入る。
中は薄暗く、少しカビ臭かった。蜘蛛の巣が所々張っていて、埃っぽい。
「あまり羽振りは良くないみたいだな…」
お兄ちゃんも同じ事を考えたみたいで、小さく呟いていた。
―――キィ……
その時、誰もいない受付の奥の扉が開いて、女の人が出てきた。
「コホッ…お客さんなんて、珍しい…いらっしゃい。ギルド『月下の花園』へ…マスターの、ミカゲ=ローゼスです…」
マスターと名乗る女性は、蒼白い肩下まである髪を垂らしてお辞儀した。
蒼い瞳は深くて、ひんやりとした印象を受けた。
声は驚くほど細くて、体も細めなのに、どこか風格のある佇まいは、その人がマスターなのだと確信させた。
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