兄妹――きょうだい――

15/20
前へ
/92ページ
次へ
「そっか。」 私の曖昧な返事に、なんて事もない返事が返ってくる。 でも、何でそんなこと… 私は視線を地面から隣を歩く兄へと向けた。 その横顔からは、真意を読み取ることは出来ない。 そのまま歩いていると、兄が口を開いた。 「中学時代もあっという間だけど、高校時代もあっという間だからな。 やりたいことがあるとないとじゃ、毎日が全然違う。 俺の経験だとな。」 私は意図がわからぬまま、兄の言葉に耳を傾ける。 「でも、お前位の年で夢持ってるやつの方が少ない。 俺だってもてなかった。 だからさ、」 ふと立ち止まり、笑って私を見た。 「やりたいことがあるって、それだけですごいと思うよ。」 その顔は、いつもより弱々しく見えた。 滅多に見れない表情に 思わず笑ってしまった。 「あはは!かなにいらしくないよ。 緊張してるの?」 その言葉に兄は苦笑した。 「そうかもな。」
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加