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《成宮 叶さん?》
右耳に、そう問いかけられた。
間違いなく男。
透き通っているのにどこか幼さのある声だった。
「ひっ…あの…」
怯える叶の様子に気づいたのか、優しく囁く
《声出さなければ何にもしないよ。
手ぇ出したら、奏多におこられちゃうしね。》
クスクスと笑う男は、もう恐怖の塊。
叶は大人しく従った。
《君とはまた近々会うことになるだろうけど…。
まあ、お兄さんによろしくね?》
明らかに口許が笑っているしゃべり方。
「あなた…は……」
―――一体誰?
すうっと暗闇に吸い込まれるように
叶はそこで意識を失った。
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