絶愛

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彼女の目が、すっと細められる。 「“鬼才の書家”。あなたの初代はそう呼ばれていたそうですね。自身の闇を『書』という形で表現し、昇華させていた……稀代の天才だと」 細められた目に力が宿る。 「私は……少なからずクリエイターと言うものを尊敬しています。表現という形で戦い続ける……抗い続けるあなた方を尊敬している」 けど――と彼女は続ける。 「……自身の闇にとらわれ、色に溺れる男に……尊敬の念などありません。あなたは……享楽に流された自分を正当化する為に『ここ』でクリエイターを名乗り、取り調べ官を名乗っているに過ぎない」 彼女の魂が――私を拒絶している。 ぞくりと背中が粟立つ。 「例えどんなに見栄えがよかろうと……そんな男に抱かれたいと思わない。わかりますね?……今すぐに、この手を離しなさい」 この女は――全てを自分の努力でなんとかしてきた女なのだろう。 だから、傲慢なまでに――私を拒絶する。 ならば――
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