絶愛

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「どうぞ」 嘲笑いながら、耳元で囁く。 「私に押さえつけられて、なぶられてる現場を見られたら……明日からの任務に支障をきたすんじゃない?」 彼女の髪を結んでいる紐を――ゆっくりとほどく。 はらりと髪が広がる。 「……あんただってわかるだろう? 組織の中で、出世すれば妬まれ疎まれる。……あんた、一部の連中から自分が相当嫌われてるの知ってるだろう?」 耳を啄むようにあまがみすると、彼女が声を上げた。 それは男の欲望を刺激するには充分すぎる程の甘い声で。 「……あんた、すごい感じやすい身体してんだな。……意外と淫乱体質なのかな?」 「違っ!!」 「まぁ……ゆっくりと楽しみましょうか? 荒絹隊長」 そうして、見せつけるようにして懐から筆を出す。 「……何を?」 怯えたように私を見る。 彼女の目まぐるしく変わる表情。 ここで、誰にも見せたことのないであろう彼女の多彩な表情。
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