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彼女の目に涙が見える。
それが悔し涙なのか……快楽から来るものなのかはわからないが。
――もう少し、なぶって遊ぶか。
ここの連中は揃いも揃って、快楽に弱い。
苦痛には耐えられるように訓練されているが、快楽には簡単に流される。
荒絹とて例外ではない。
じきに堕ちる――。
だから、私は油断していたのだ。
抵抗できない状態で、快楽になぶられている彼女にその余力は残っていないと。
私が少しだけ、身体の位置をずらし、彼女からわずかながら離れた時だった。
彼女の瞳に力が宿る。
「!?」
下腹部に強い痛みと衝撃。
続け様に背中にも痛みと衝撃が走り、床に転がり落ちる。
再び、胸に衝撃。
激しく咳き込みながら視界にとらえたものは、彼女が渾身の力で私を蹴りあげる姿だった。
何かの金属が転がるような軽い音がする。
目の前に小さなナイフが転がっていた。
続いて、ハラリと布が落ちてくる。
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