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案の定である。
人目につかない場所に来ると、女がせがみ出した。
『なぜ、会ってくれないの? 私の事……嫌いになったの?』
甘える様が可愛くもあり、鬱陶しくもあった。
適当に相づちを打って、口づけを交わし、今夜会おうと約束をすると、女は満足そうに私から離れて行った。
――結局は私に抱いてと頼むんだから、どこで言っても同じなのに――半端なプライドがある女は大変だな。
女の背中を見ながら苦笑する。
“ここ”の女どもは、私に相手を頼む事が多い。
プライドの高い女たちにとって、私はちょうどよい相手なのだろう。
そんな女たちを優しく微笑みながら抱いてやる。
欲望を優しく叩きこんでやる。
女たちは『愛されてる』と勘違いして――暴走する。
けれども、暴走は中途半端な形で終わる。
醜聞はエリートにとって致命的である。
だから女たちは耐える。
私が“ここ”で何人もの女と関係を持っていても――甲斐甲斐しく耐える。
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