死編曲想【A-Z】01

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【D】 Dは薬物投与で死んだ。 幼い頃から料理に才を発揮したDだったが、30を目前にして味覚障害に陥る。 日増しに低下する調理技術と名誉や人望。 やがてDは薬物に溺れた。 味覚を失ったDだったが、不思議と薬だけは彼に味を示した。 頭痛薬は酸っぱい。 胃薬は苦い。 風邪薬は辛い。 鎮静剤は塩っぱい。 眠剤は甘い。 精神安定剤は甘い。 神経抗生物質は甘い。 甘い。甘い。甘い。 やがてDは薬物の過剰摂取で死に至った。 死に際に彼は初恋のように甘いチョコレートの味を感じていたらしい。
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