第2話

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水球。 私にとって、新しい響きではなかった。 昔から身近に感じていたこの競技は、私が唯一努力しようと考えたスポーツだった。 「……白波学園、水球部か。」 全国大会の常連校だ。 男女共に粘りの強いディフェンスラインが売りで、この学校のキーパーは世界でも通用する実力者だと言われている。 飛沫は、関東の中学リーグでは負けなしの実力を誇ったチームの元メンバーだ。 そんな飛沫を含むチームのメンバーは、その大半が強豪校への進学を決め、例に漏れず、飛沫もこの白波学園への入学を決めた。 声が欲しいだけ。 水球というスポーツは、水中でやることから、派手な水飛沫と、その音で、視覚と聴覚を塞がれるスポーツである。 だからこそ、声が欲しいのだろう。 1つの声出しが、攻めの起点になることはよくある。 または、その声だけで流れを引っ張り、終始主導権を渡さずに試合を終えることも可能だ。 飛沫は、このスポーツを小さい頃からやってきた。 誰よりも泳いだ自信がある。 誰よりも投げた自信がある。 誰よりも、たくさんの敵と対峙した自信がある。 その自信を持って、飛沫は水球部の活動場所であるプールに向かった。 .
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