prologue「だめでした」

2/2
前へ
/124ページ
次へ
「凪雲(ナグモ)くんっ!」 突然後ろから名前を呼ばれ、振り返る。 中庭に植えられた木が風にざわめいている。 俺は息を整えながらそいつを見つめていた。 「ごめん、ごめんなさい。僕は君の傍に居れないよ」 信じていたのに…… いや、こうなるとはわかっていた。 ただほかの人より遅かっただけだ。 「あぁ、そうか。じゃあな」 短く告げると、そいつは少し傷ついたような顔をした。 しかし、そんな光景なんてもう何度も見てきたんだ。 それ以上は何も告げず、その場を後にした。 背中に突き刺さるそいつの視線が、いつまでも残っているようで泣きたくなった。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

187人が本棚に入れています
本棚に追加