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「凪雲(ナグモ)くんっ!」
突然後ろから名前を呼ばれ、振り返る。
中庭に植えられた木が風にざわめいている。
俺は息を整えながらそいつを見つめていた。
「ごめん、ごめんなさい。僕は君の傍に居れないよ」
信じていたのに……
いや、こうなるとはわかっていた。
ただほかの人より遅かっただけだ。
「あぁ、そうか。じゃあな」
短く告げると、そいつは少し傷ついたような顔をした。
しかし、そんな光景なんてもう何度も見てきたんだ。
それ以上は何も告げず、その場を後にした。
背中に突き刺さるそいつの視線が、いつまでも残っているようで泣きたくなった。
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