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【凪雲】
丁寧な説明を受けたおかげか、迷うことなく屋上へたどり着いた。
静かだ……
「あー。何?」
「バレてたか……」
途中から誰かが付けて来ていた。
無視していたが、ちょっと一人になりたい。
物陰から出てきた人は、俺の頭をポンポンと撫で始めた。
「皇軌……」
付けて来ていたのは皇軌だった。
「その……なんだ。
お前が消えそうだったから、無意識にだな……」
消えそうって……
何を根拠に。
「お前さ、聡い子だったんだろうな……
周りの人の事ばっかり考えてたんだろ?
周りからしたら気が利くのかもしれないがお前は自分を出せない。
遠慮して、周りを優先して、お前は外からそっと見ておく……」
「……」
「自分の容姿を理解しているから、E組に来た。
C組でも遜色ない頭脳を持っているのに」
「俺はそんなにいい子じゃないですよ」
「そうか?
前の学校のことも、さっきの食堂のことも、自分の為には動かなかっただろ?」
「その話は止めてください」
「嫌だね。
だからお前はさ、もっと自由にすればいいと思うけどね、俺は」
「自由にしてますよ。とても自由に」
「鳥籠の中の自由なんて底が知れてるだろ?
すぐに変われなくてもいい。
少なくともE組では遠慮すんなよ。お前を怖がるやつはいないし、敬遠するやつもいない」
頭を撫でる手つきが一層優しくなった。
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