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「……っ」
やめてよ。
俺は、
「うわっ、泣くなよ……」
泣かないって決めていたのに。
「泣かした本人が……何言ってんですかっ」
「すまん……」
そっと抱きしめられた。
いつぶりだろうか、人の温かみに包まれるのは。
両親にもされた記憶がない。
「うぅっ……」
「さっき言ったばかりなのにまた我慢か?
俺は他のやつとは違うんだから。
今、全部吐き出せ」
「俺は……怖がられたく、なかった……
皆と、仲良く……遊びたかった……
一人でいるのは嫌だ……うぅ……」
初めて声をあげて泣いた。
涙が止まらなかった。
ずっと、今までずっと溜め込んでいたものを吐き出せたからか、顔はぐしゃぐしゃでも頭はスッキリした。
先生は、俺が泣いている間ずっと頭を撫でてくれていた。
「気は済んだか?」
「はい、すみませんでした……。
服も、こんなにぐちゃぐちゃにしてしまって」
シワ一つなく綺麗だったダークスーツが台無しだ。
「ほんとだな……ハハッ
まぁ気にすんなよ、お前が俺に話してくれたのと比べたらこんなのどうってことない。
ほら、こっち向いてみ?」
先生を見上げると、親指の腹で少し乱暴に涙を拭われた。
「んっ、痛いです」
「これくらい我慢しろよー」
「さっきは我慢するなって言ったくせに……」
「それとこれとは別だ」
そう言われ、クシャクシャと乱暴に撫でられた。
撫でられるの嫌じゃない……かな。
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