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縦にも横にも広すぎる廊下を歩く。
どうやら空調も効いているようだが無駄でしかない。
そういえば、どこに行けばいいんだろうか?
フラフラとその辺を歩いていると、トイレらしきところから生徒が一人出てきた。
ちょうどいい、道を聞こう。
生徒の方に歩くが、目が合った瞬間ダッシュで逃げられた。
「……ああ、この見た目のせいか」
納得するしかなかった。
目つきは悪いし、売られた喧嘩を買って付いた怪我の痕。体格もそこらの人と比べたらがっしりしている。
少し悲しくは思うが、気にはしない。
慣れてしまったんだ。
恐れられることも。
敬遠されることも。
また当てもなくフラフラしていると前方からキチっとスーツを着こなした20代くらいの男が現れた。
目が合うと笑顔に……笑顔?
俺と初対面で笑顔になれる人間はこれで四人目だ。
不思議と、安心出来る。
「来嶌凪雲さんですね? 私、理事長秘書の鈴木と申します。
理事長室まで来ていただけますか?」
秘書らしい。
物腰も丁寧で、こんな俺にも丁寧な口調で話してくれる。いい人だ。
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